■■第1-23日 Vol.23
宿王華菩薩の疑問
【薬王菩薩本事品第二十三】
(一~五行)
■■今日の一偈一句
ソ トキ シュクオウケ ボサツホトケ モウ モウ セソン ヤクオウボサツ イカニ シャバセ
爾の時に宿王華菩薩、佛に白して言さく、世尊、藥王菩薩は如何してか娑婆世
カイ アソ セソン ヤクオウボサツ ソコバク マンノクナユ タ ナンギョウクギョウ ゼンザイ
界に遊ぶ。世尊、この藥王菩薩は若干百千萬億那由他の難行苦行あらん。善哉
セソン ネガ スコ ゲセツ モロモロ テン リュウジン ヤシャ ケンダツバ アシュラ
世尊、願わくは少し解説したまえ。諸 の天・龍神・夜叉・乾闥婆・阿修羅・
カル ラ キンナラ マゴラガ ニン ヒニン トウ マタ タ コクド モロモロ キタ ボサツ
迦樓羅・緊那羅・摩候羅伽・人・非人等、又他の國土より諸 の來れる菩薩
オヨ コ ショウモンシュ キ ミナカンギ
及び此の聲聞衆、聞いて皆歓喜せん。
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1. 今 日 の 解 読 ! (苦)
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その時に宿王華菩薩が、佛に尋ねた。世尊、薬王菩薩はどうして娑婆世界に留ま
り遊行しているのでありましょうか。世尊、この薬王菩薩は凡そ大そう多くの難
行苦行を達成してきていると聞きます。よろしければ世尊、願わくは少し説明し
てくだされ。世の中の天・龍神・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦樓羅・緊那羅・摩候
羅伽・人・非人等、また他の国土より様々に来ている菩薩およびこの場の声聞衆
は、これを聞けば皆が大そう感激することでありましょう。
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2. 今 日 の 説 法 ! (集)
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この品から宿王華菩薩が登場します。
ところでこの宿王華菩薩とは娑婆世界の菩薩なのでしょうか? そして何らか釈
迦に馴れ慣れしそうに尋ねる口調はどうも自惚れに思え、腑に落ちませんが、釈
迦と一体どういう関係にあるのでしょう?
この法華經序品第一および無量義經徳行品第一には釈迦の弟子たちの他、釈迦に
伴って暮らしている菩薩大士八万人のうち筆頭の名が連ねられています。
その中を見ますと文殊師利菩薩、弥勒菩薩、そして薬王菩薩などは記されていま
すが、どうやら宿王華菩薩の名はどちらにも記されていません。
ちょっと謎の存在の宿王華菩薩のようです。また、薬王菩薩とはすでに法師品第
十にて重点的に法師としての立場を釈迦に説かれている重要な菩薩ですから釈迦
の娑婆世界の中でも元々から有力で同じ娑婆世界の菩薩なら誰もがよく知る存在
であると思えます。
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しかし、宿王華菩薩は薬王菩薩には百千萬億那由他の難行苦行という大そう古く
からの菩薩であることだけは知っているようです。
宿王華菩薩は、それでいて特に薬王菩薩の素性までは知らされたことはないらし
いですから薬王菩薩と共に娑婆世界に属していた菩薩ではどうやらなさそうです
ね。
ということから、宿王華菩薩を推理しますと、前品や前々品での釈迦からの伝授
や屬累は受けていないのが宿王華菩薩ではないかと思われます。
とにかく、前品で一旦それまでの流れが一段落し、この品は少し流れを変えた始
まり方をしているところが謎と共に意味がありそうです。
この品の解明はかなり難しいようです。
頭がチンプンカンプンに成りそうですが、それだけ有力な秘密が隠されているの
でしょう。
薬王菩薩に対し本事品という意味からこの法華經の中心的な意味を持っていると
考えられるからです。
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3. 今 日 の 謎 ! (滅)
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まず、今日の謎を整理して見ることにしましょう!
その謎1:本事品の本事の意味はなんでしょう?
その謎2:単に佛とあるのは本当は釈迦佛のことなのでしょうか?
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4. 今 日 の 知 識 ! (道)
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仏法でいう「事」とはとても大切な約束事のことです。
また、事と義とはとかく対照比較されます。義とは忠義など間違えても良いから
何かを実行するということでしょう。たとえば、前世の無知な業(行い)のよう
なものでしょうか。
また、前品で説明した委任と委託との違いに似た責任に関する種別の違いだとも
考えられます。
ですから前品までが教えに対する義を説き、この品からは事を説き始めたと考え
ても良いかもしれません。
遂に実践だから皆慎重になれ!という感じかもしれません。
また、佛に白して言さく、などのこの単に「佛」とは本当に釈迦を指した尊称な
のかという不安です。
前にも説明しましたが佛の十號として同じ十種類の呼び名がどの佛に対しても同
じ呼び名であるということです。
つまり、法華經中の呼び方で単に世尊や佛などと記されていても確かなところそ
れがすべて釈迦に対してなのかは厳密にはわからないということです。
この品での佛も他の品などとの整合性を考えて釈迦であるのかを推理する必要も
でてくるようなのです。
たとえば、多くの品の始まりは「爾の時に佛、」や「爾の時に世尊、」なのです
が、次の妙音菩薩品第二十四では「爾の時に釋迦牟尼佛、」で始まり、釈迦のフ
ルネームを直接特定しているかのように印象付けていることも考えられます。
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この法華經は、釈迦の死後しばらく後に集った修行者の中で大弟子の阿難が頭で
暗記していたすべての教えを涌出してその後伝えられてきたものであると以前に
も少し説明しました。
しかし、実際の法華經の編纂は100年間位の歳月をかけた内、後半の50年く
らいで薬王菩薩本事品以降が作られた訳ですから、ある程度正確に阿難の涌出し
た話が伝えられてきていたとしてもせいぜい法華經の最初の前半の部分くらいだ
ったのではないかとも思われます。
また、あえて爾の時、爾の時として各品の初めをつなぎ合わせ、一貫して同じ時
期の一連の話として全巻がまとめられているようですが、たとえ話のあら筋はそ
うであっても、この薬王菩薩本事品以降の品は付属的な重要参考程度の内容とし
て現されているように思います。
実際にはこの品以降を先によく解読しないと全体の意味は解ってきません。
ですから、法華經全体の意味解明のためにはこの品以降を未来予測の例題による
参考書或いは問題集の部分のように扱って加えられたものではないかとも思うの
です。
よって、単に佛と記された品が釈迦であるかどうかの謎を解くのも信者にとって
の一つの重要ポイントな問題であり、そう簡単には未来戦略を解き明かせるもの
ではない秘密の書面の作られ方だったと考えてみましょう。
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5. 今 日 の 解 脱 ! (解)
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宿王華菩薩と薬王菩薩とはその名にどちらも王がついてますね。
たぶん、どちらも王様の関係筋なのでしょうね。
また、文殊師利法王子菩薩も王子がついてます。
とりあえず釈迦も以前は国王でしたが、王様を中心とした王家一族は古代文明の
時代に繁栄し、その後、釈迦入滅以降位から徐々に世の中は神権政治といって人
間そのままが生き神様として崇められる新たな国家体制が旧王家を滅ぼしていっ
たようです。
そういう将来を予測していた釈迦の頃の古くから続いてきていた王家一族はまさ
に衰退が始まろうとしていたのでしょう。
それであれば王族同士の仲間割れもそろそろ生じ始めていたでしょう。
それまでの王家は確かに神への信仰を通じて大衆を支配していたのでしょうが、
新たな神権政治のようにこの世に生きる人間全般が神であるとしたり、あの世の
神を架空に考えたり無視するようなことは決してなかったのが古くから長く続い
た文明の王朝時代だったのでしょう。
そして王家と大衆はいつも一体であり、王家が神信仰であれば大衆民族は古くか
らの先祖への佛信仰が進んだ調和を作り出していて、それこそ最も長く続いた民
族習慣だったのでしょう。
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その大調和が近い未来に崩れだすということはまさしくこの世の一大事だったの
です。
その原因は新たに発生しだした神権政治だったのでしょうが、釈迦は大衆の意識
変化に自らに神になって神権政治をしようとは思わず、大衆の仏信仰を続けさせ
ようと城を出て法華經を自ら探し求めたのではないでしょうか?
つまり釈迦が必然的に目指したものは神権政治に対抗する佛権政治なる世俗主体
なものだったのでしょう。
しかし、佛で政治は成り立ちませんね。どうしても政治は神の力であることはは
っきりしていたのでしょう。
そこで王が自ら仏教の普及を図る中心的な政策を行うには王を辞める覚悟で出家
して仏法に専念しなければならないという最新なルールが確立されたのだと思い
ます。
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6. 今 日 の 振 り 返 り !(脱)
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旧王家にとっては空前絶後の未来が予知されていたようですね。
どうやらそういう慌しい状況が示されているのがこの本事品のようです。
王家族の中でそれを知っている者は将来に仏法を求めようにもそれまでの莫大な
資産を失いスッカラカンな状態になることを覚悟しなければなりませんね。
そのようにいかに宿王華菩薩などの王族を仏法へ上手く移行するよう誘導せしめ
るかがこの薬王菩薩本事品なのでしょう。
私はこの薬王菩薩や宿王華菩薩の状況は日本の鎌倉時代にとてもよく似ていると
思っています。
その時代の日蓮聖人がいかに躊躇混乱している幕府の宿王華陣営を説得するかが
本当の仏法を日本へもたらすことができるかどうかの大因縁だったと思うのです。
法華經に示されたインドの釈迦が仏教であっても救済は戦いの教えであることを
見抜けたのは世界中で日蓮聖人ひとりだけだったのではないかと思います。
本当に日本、いや世界にとって釈迦の考えを実情からほぼ精密に紐解いてくれた
日本の日蓮聖人の功績はずば抜けた釈迦の発想力と同等に、共に戦い抜いた神髄
仏法の聖者のとても尊い人生だったようです。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
末永くご愛読いただけますよう、今後とも何とぞよろしくお願いいたします。
(ぶっけん)
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ぶっけん (土曜日, 23 5月 2015 22:23)
『日本に似ている薬王菩薩・宿王華菩薩』