■■第1-16日 Vol.16
如来の誠諦の言葉
【如来寿量品第十六】
(一~四行)
■■今日の一偈一句
ソ トキ ホトケ モロモロボサツオヨ サイ ダイシュ ツ モロモロゼンナンシ ナンダチマサ
『 爾の時に佛、諸の菩薩及び一切の大衆に告げたまわく、諸の善男子、汝等當に
ニョライジョウタイ コトバシンゲ マタ ダイシュ ツ ナンダチ マサ ニョライ ジョウタイコトバ
如來の誠諦の語を信解すべし。復大衆に告げたまわく、汝等當に如來の誠諦の語を
シンゲ マタマタモロモロダイシュ ツ ナン ダチマサ ニョライ ジョウタイコトバシンゲ
信解すべし。又復諸の大衆に告げたまわく、汝等當に如來の誠諦の語を信解すべし。
』
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1. 今 日 の 解 読 ! (苦)
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その時に釈迦が、諸々の菩薩および一切の大衆に告げられた、「諸々の生い立ちの良
い青年たちよ、汝らははっきりと如来の真実の言葉を信受せよ。」また、大衆に告げ
られた、「汝らははっきりと如来の真実の言葉を信受せよ。」更にまた、大衆に告げ
られた、「汝らははっきりと如来の真実の言葉を信受せよ。」
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2. 今 日 の 説 法 ! (集)
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釈迦はそれまでの数々の喩えによる説明の総結論を下すように、その場の様々な菩薩
及びすべての大衆に向って告げられました。
それは「汝らははっきりと如来の真実の言葉を信受せよ。」という言葉を同じく三遍
も続けざまに呼掛けたのでした。
恐らく釈迦はこの誠諦の語というものをよほど強調していますね。
それほどこれからいう言葉の真実を間違いなく理解せよということなのでしょう。
すなわちこの誠諦の語とはどういう言葉なのでしょう? また、この品の如來壽量品
という名のあえて如来を冠していることも気になるところです。
法華経の全28品の題名を眺めてみると、如来○○と冠してある品は、この如來壽量
品第十六と如來神力品第二十一のなぜか二つあります。
法華経のこういう示し方には必ず何等かの意味があると睨んでみましょう。
この二つの品は必ず如来だけによることを強調し、如来ならではの特別な品であるこ
とを密かに示唆しているはずです。
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如来は何か?つまり通常の佛とは違うらしいのです。
その通常の佛とは何が違うかといえば、まずなんといっても神通力を特別に持ってい
るということでうなづけると思います。
この世に降りてくることで神通力を具足することができるのですね。
これは如来ならではの大特典サービスがついてくるのでしょう。
誠諦とは仏教用語に於いては真実と訳されています。
しかし、ただ単に真実といえど如来の場合の真実というべきでしょう。
これは仏様はすべて如来でもあるという考えは間違いなのではないかと思われます。
如来の姿となって降りてこられる仏様は限られていて、その如来になれる仏様はかな
りの智慧や熟練度の高い特別な仏様なのだと思います。
釈迦は当然如来でいらっしゃいますが、如来の誠諦の語を信解せよと呼びかけた後、
如来の秘密な神通の力をあらためて強調し、そしてその後に如来の寿命が永遠である
ということをことごとく詳しく説明しています。
つまり、この如來壽量品では如来の寿命が無量、すなわち永遠であることの意味が鋭
く重要な教えとなっているのです。
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3. 今 日 の 謎 ! (滅)
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まず、今日の謎を整理して見ることにしましょう!
その謎1:如来の寿命が永遠であることと如来のいう真実の語を信じることはどうい
う関係にあるのでしょうか?
その謎2:釈迦滅後に於ては法華経を信ずることになったはずですが、あえて如来の
説法を信じさせようとしたのはなぜでしょう?
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4. 今 日 の 知 識 ! (道)
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ここで一旦、前品までの状況の流れを振り返ってみましょう。
釈迦は弟子達に対し盛んに様々なたとえ話を用いて説いてきました。
そして更に弟子達に、佛に頼らず自らに成仏を目指す自立した菩薩になる自覚を持つ
よう推し進めてきました。
ですから前品までに大方の声聞弟子たちは皆将来の成仏を約束され、佛を頼らない自
立した修行、すなわち法華経を学習して護持することでどんな悪世にも立ち向かって
いくことを誓ったのでした。
すなわち、ここで釈迦があらためて法華経の教えそのものではなく如来自身の説法を
信解すべしというのは一体どういうことか疑問が生じますね。
よく考えてみましょう。これ以前に釈迦は大衆に提婆逹多の過去の話を聞かせた後、
勸持品第十三で弟子達が何やら妙な判断を起したかのように釈迦の娑婆国を捨てて他
国へ行くと言い出したことに対し釈迦はかなり落胆していたと考えてみましょう。
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その後、釈迦は文殊に何事もなく安静に過ごすべきだと教え、次の從地涌出品第十五
では今度は他国から来ていた菩薩衆のほうから釈迦の娑婆国にて法華経護持の活動を
試みたいと願われだしたりで繊細な智慧を持つ釈迦の心の混乱は最大ピークに達して
いたのではないでしょうか?
つまり、何度言っても理解できないこの世の者たちに今までの説法を総決済するつも
りで如来の真実の意味を以って完全に知らしめようとしたのがこの品ではないかと思
われます。
この如來壽量品第十六は法華経全般の中でも最も主軸をなす品であり特に重要だとい
われています。
如来が何であるか? それを知ることがこの法華経のみならず仏教全般や仏の世界の
意味を知るための重要な基本なのであり、如来の本当の意味はこの法華経のこの如來
壽量品だけに説かれているといえます。
つまり、如来の秘密がわからないとこの法華経を解くことはできないのです。
このように考えてようやく到達するのが如来の誠諦の語に対する意味なのですが、如
来の寿命は永遠であることは如来の教えが永遠なるはかり知れないほど過去より不変
な真実であるということなのです。
つまり、釈迦が今まで説いてきた苦諦・集諦・滅諦・道諦のようにその時代に応じた
随時方便などで変化するのではなく、誠諦とは永遠に変わらぬ真実という意味になる
のです。よって、如来の永遠不滅の言葉ということなのです。
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5. 今 日 の 解 脱 ! (解)
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一般にいわれていることですが、法華経28品全体を二分して最初の序品第一から安
樂行品第十四までの14品を前半、從地涌出品第十五から最後の普賢菩薩勸發品第二
十八までの14品を後半と区分しているそうです。
そしてこの前半部を迹門といい、後半部を本門というそうです。
(更に詳細には、安樂行品第十四中の途中から分けて前半後半とする分け方があるら
しいです。)
このような分け方はどういう意味があるかというと、たとえば日蓮聖人さんは、この
分け方について迹門とは法華経の中でも本門である後半部に対する仮の教え部分だと
説いています。
建物で言えば本門が建物本体であり、迹門はその本体が完成するまでの外部の仮設足
場という見方をしています。
よって、本体の完成の際には前半の迹門は必要なくなり、取り払われる性質のもので
あると説いておられるのです。
すなわち、釈迦の末法における法華経全文の理解上は日蓮聖人は迹門は捨てよとまで
弟子や信者全般に対し説いていたということです。
しかし、それだけ迹門である序品第一から安樂行品第十四までは法華経全体を理解す
る上で本当に障害となるものでしょうか?
ここでもう少し考えてみたいと私は思いました。
なぜかといえば現代に於ても法華経そのものに現に迹門は省かないままに確かにセッ
トされているままだからです。
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この現実こそ何より法華経の真実なのではないでしょうか。
私は法華経のありのままの現実の姿を真実であると信じています。
誰の意見に対しても法華経自体は不変なのです。
何処を省こうとどう書き換えようとそれは法華経自体が判断するのです。
たとえ元の法華経がこの日本国に渡ってきた後に日本用に書き換えられていたとしよ
うとそれも日本に渡ってきた法華経自体が判断したことなのです。
よく考えてみてください。この法華経の迹門にて釈迦は、弟子である声聞や阿羅漢た
ちにはほとんどすべてに授記を済ませた後、その弟子たちはほとんど皆釈迦を置き去
りに他国へ行くといってその場で出て行ってしまったと仮に想定してみてください。
その後に菩薩である文殊と打ち合わせをして、その次には他国から来た菩薩たちの請
願に対し釈迦は大量の地涌の菩薩を地底より召しだしてみせ、それらは皆釈迦が古く
から密かに育ててきた忠実な修行菩薩たちであると説明したのです。
つまり、この壽量品で釈迦があらためて如来の真実を説く際、この会衆には菩薩と大
衆が居ても、かつて弟子であった者たちは皆もうこの大衆の中には居なかったと考え
ることもできると思います。
そして、実際に後半部の本門ではすでに迹門に登場していた声聞や阿羅漢弟子たちへ
の指導はもう一切なく、如来として数々の菩薩のみへの実践指導ばかりになっている
のです。
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こういう意味で迹門は声聞などの弟子達への指導、本門は菩薩中心な指導の違いとい
う区分になっていると考えられるのです。
これでは釈迦は弟子達が娑婆国から出て行ったことにより見切りをつけ、新たに菩薩
中心だけで結成される新組織を本門で築き上げたとも考えられるわけです。
もし、このように考えてみれば十分に迹門での弟子達との関係と本門からの新しい菩
薩たちとの関係は実に興味深い関連性が出てくるのです。
私にはここで現代に於けるかの有名な経済学者ドラッガーの言葉「新しい組織には新
しい人材を用いよ」が思い起されるのです。
つまり新しい組織にはもう旧組織の人材は役に立たないということですね。
実に割り切ったサッパリした経済教訓のようですね!
しかし、ここにはとても奥深い意味が隠れているに違いないでしょう。
私は釈迦に対し娑婆国を捨てて他国へ出て行ったあの弟子達はある意味でひょっとし
たらとても突飛に優れた判断だったのではないかと同情せずにはいられなくなってく
るのです。
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6. 今 日 の 振 り 返 り !(脱)
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今日は我ながらになんと鮮やかに感動的な発想を思い立ったものだと深く思い悩んだ
ものであります。
そこで、声聞弟子たちは本当に釈迦の娑婆国を捨てて出て行ったのだろうかと心配し
てその後を調べてみますと、最後の最後まで特に舎利弗は居たことになっていてその
他声聞衆も釈迦の菩薩への説法を聴いていたらしく記されているようです。
それでやっと日常の本来の法華経らしくペースが戻ったようでホッとします。
ただし、最後の品の最後には舎利弗等の諸の声聞及び一切の大會の衆は皆歓喜して礼
をなして去っていった、で終わっていますので、元の弟子達は釈迦の説法が全て終わ
って、その後に他国へ出て行ったかどうかはもはや知れません。
それはどうあれ、釈迦は懸命に教えた最初の弟子達をそのまま見捨ててはいなかった
と思います。
新組織の中にそのまま取り込み、ただし、以前から菩薩として修行してきた者たちが
法華経の運営のメインとして上司に君臨するのだという原則をしっかり守らせたはず
です。
釈迦の末法の現代、かつての弟子達は今どのような活躍をしているのでしょう。
もう成佛は出来たのでしょうか? 法華経の変わっていない現代もひょっとしたら昔
のままなのかもしれませんね・・・・!
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
末永くご愛読いただけますよう、今後とも何とぞよろしくお願いいたします。
(ぶっけん)
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